
先日、旅先でふらっと入った本屋さんでなんとなく手に取って立ち読みして以来、その本のタイトルから連想されるテーマについて時々考えています。
“A Year to Live: How to live this year as if it were your last” by Stephen Levine
翻訳すると「最後の1年:もしこれが人生最後の1年だとしたらどう生きるか」という感じでしょうか。
人生を振り返ったときに「後悔」よりも「感謝といたわりの気持ち」を持って自分の人生を愛おしみこの世を去ることができるように、普段から毎日を大切に生きるには何ができるか、について書かれた本です。(立ち読みだったのでサラッと内容を確認しただけなのですが。)
病気などで余命宣告を受けた人びとは、残りの人生をどう過ごすかについて急にはっきりと分かるようになり、日々を大切に過ごしながら「悟り」を開く人も多いようです。そこで、余命宣告を受ける状態にならずとも、健康な人生を生きている時から「終わり」を意識しながら毎日を大切に過ごしたら人生をもっと充実させることができるはずだ、というようなことを著者は述べています。ちなみに、この本はアメリカではホスピスなどでも使われているようです。
普段から意識して毎日を大切に過ごすために、メディテーションや呼吸法のエクササイズなどが紹介してあります。これは、自分の感情を見つめて、「自分にとって大切なことはなにか」を日頃から落ち着いて考えることに役立つようです。また、英語では「バケットリスト」と言われる、“死ぬまでにやっておきたいことリスト”を作って自分の残りの時間を有意義に過ごすためのプランニングもすすめてあります。バケットリストは、「これが人生最後の1年なのだ」という気持ちで作る場合と、時間制限のない夢計画的な気持ちで作るのでは内容が大きく変わってくるそうです。
限られた時間しかないことを意識しながらバケットリストを作ることで、これまで重要だと思っていたことが実は全く重要でなかったことに気がついたり、大きなことよりも些細なことに喜びを見つけたり感謝することができるようになるそうです。
このテーマについて考えていて改めて感じたのは、人間は生まれたその瞬間から死へ向かっているのだということです。輪廻転生のコンセプトを信じている自分としては、魂は永遠なので終わりはないと考えていますが、この肉体における今世の経験には終わりがやってきます。残りの人生があと1年だとしても20年だとしても「どう生きていきたいのか?」と自分に真剣に問いかけてみると、この一瞬がどれだけ大切なものかということが実感できるような気がします。そして、自分をもっと大切に生きていきたい、そう心から思えるようになれるような気がします。
そして思い出したのが、「アバウト・タイム 愛おしい時間について」という映画です。この映画では、自分の過去へタイムトラベルができる家系に生まれてきた主人公の男性が、自分と家族の人生をよりよくするために何度も過去へ戻って小さな修正をします。そして、次第にタイムトラベルをしなくても、日々の一瞬一瞬をマインドフルに大切に生きていれば、時間をさかのぼって修正する必要などないのだ、ということに気がついていきます。
日々、いろいろな感情を経験しながら過ごしている私たち。不安や悩み、恐れや心配ごとは尽きませんが、どんなことにも「終わり」があって、全てはただの経験なのだということ。それに気がつけると、いやなことでも少しだけ客観的に捉えることができて、自分にとって「喜び」となることの方にもっと意識を集中して生きていけるのかなぁと思ったりします。