
何が答えなのか分からないことや新しいチャレンジなどで頭がいっぱいいっぱいになっていたある日、友人からブレネー・ブラウンの著書 "Daring Greatly" をオススメされました。”Vulnerability”(弱さ、傷つきやすさ)についての研究家で、TEDトークなどでご存知の方も多いかと思います。
Vulnerabilityはアメリカにいるとよく耳にする言葉なのですが、Weak(弱い)よりももっと傷つきやすくて脆い、無力な、という意味があります。
例えばコンフォートゾーン(快適な場所)を出て、いつもの自分とは違うことをするときに感じる感覚です。人は「どうなるか分からない、確約がない」ことについてVulnerabilityを感じ、自分の弱さをさらけ出される可能性があることに不安を感じます。
人間関係で自分をさらけ出す時、恋愛しているとき、自分のアートや作品を人に公開すること、怖さを認めること、新しい事業を始める時、ひとり旅をすること、自分の意見を人に伝えること、大勢の人の前でスピーチをする時など、他にも人によってさまざまな経験があると思います。
何が起きているのかきちんと把握しておきたい、自分のコントロール下で物事を進めておきたいと思っている人にとって、新しいことや確約のないことをするのは恐ろしいものです。また、多くの人が持っている「できる限り完璧でありたい、失敗したくない」と願う気持ちが、未知へのチャレンジに恐怖を感じる原因でもありますよね。「人にどう思われるか不安」というのもあると思います。
傷ついた心を隠しながら生きていくのをやめて、傷ときちんと向き合うこともVulnerabilityを感じることだと思います。また、傷つくこと、弱さを見せることを恐れるあまりずっと鎧を着て守りの態勢で生きてきた人が、鎧を脱いでありのままを生きると決心するときにも感じると思います。
ブレネー・ブラウンは、弱さや傷つきやすさのリスクを承知の上で、それでも勇気を持って自分をさらけ出すことの尊さや大切さについて話しています。これは何に対しても自分をさらけ出すということではなく、「自分の信じること、価値のあることのために」という意味です。(意味もなく弱さを認めることとは違うのであしからず!)
確かに、自分の過去の経験を振り返ってみても、リスクを承知の上でそれでも「やらなければならない」気持ちに押されて「えいっ!」と目をつぶってジャンプするような経験をしたときに、大きなマジックやミラクルが起きてきたのだと分かります。飛び降りた後にも恥ずかしい思いをしたり自分の頼りなさを情けなく感じたりなど、イヤな気持や葛藤は続いていくのですが、それでもジャンプしてみてよかったと思えるから不思議です。傷つくこと・自分の弱さをさらけ出すリスクは「深いスピリチュアルな体験」なのだと、改めて確信を持って考えるきっかけになりました。
ライフコーチングで出会うクライアントさんたちも、このVulnerabilityのリスクを覚悟の上で、自分の弱さをさらけ出す勇気を持って自分と向き合うことを決めた方々なのだと感じます。自分の心のあり方を人に見せるのは恥ずかしいし、怖さもあります。でも、自分のダークな部分を見つめることは、自分の弱さを認める大きな勇気です。
弱さを認める勇気を持った人はとても美しいオーラを発しています。心の深い作業をしている期間、クライアントさんはキラキラしている方がとても多いのです。Vulnerabilityは「心を開く」ということなのかもしれません。開くことで感受性も高まり、ポジティブなエネルギーへのアクセスが可能になるようです。
ブレネー・ブラウンも話しているのですが、心理学的に感情は何か一つだけを選んで麻痺させることはできないと言われています。つまり、悲しみ、恥ずかしい気持ち、怒り、などのネガティブな感情はできるだけ感じたくないものですが、それらの感情を意図的に麻痺させることは、喜びや嬉しさなどの感情も同時に麻痺させてしまうということです。自分の中に潜んでいる悲しみや辛さを感じないようにすることは、喜びや楽しみの感覚も鈍らせているということなのです。
なので、リスクを承知で弱さやネガティブな感情と向き合うことは、逆に大きな喜びを迎え入れるためでもあるということですよね。これは「生きることをありのまま体験する」ということなのだと思います。
ブレネー・ブラウンさんのTEDトークはこちらから。