
先月、私のドリームワーク(夢分析・夢研究)の恩師、Jeremy Taylor(ジェレミー・テイラー)先生がお亡くなりになりました。つい最近まで普通にお元気だと思っていたのであまりの突然の訃報にとても驚いたのですが、なんと奥さんがお亡くなりになった2日後に心臓発作で亡くなったとのこと。仕事でもプライベートでもパートナー関係の、それはそれはとても仲の良いご夫婦だったので、まるでこの世を去るタイミングまで一緒にしてきたのかのようで、偉大な先生を失った悲しさと同時に、ソウルメイト夫婦の深いつながりに胸が熱くなりました。
お亡くなりになってから今日でちょうど1ヶ月。この1ヶ月間不思議な夢をたくさん見たのですが、その度にJeremy先生だったらどう言うかな?と何度も思い、先生が旅立たれたことのインパクトを感じていました。
40年以上に渡るJeremey先生の夢研究は一般人の夢だけにとどまらず、精神病患者の夢、刑務所で服役中の人々の夢など多岐にわたります。そして「ドリームサークル」という、グループで夢を語り合うワークを通して、晩年は世界中でセミナーをされ、夢を通じての平和活動をされていました。
夢を語り合うことが社会平和に繋がるなんてちょっと意外かもしれませんが、Jeremy先生のあみだしたドリームサークルを体験したことがある人はきっと納得できると思います。
ちなみに下記がJeremy先生のドリームサークルでのルールで、「ドリームキット」と呼ばれています。参加する人は皆ルールを尊重して、お互いの夢の意味を探っていきます。
①すべての夢はユニバーサル・ランゲージを話し、わたしたちの心、身体、魂を健康に導くためのメッセージを運んできます。“悪い夢”というものは実際には存在しません。恐怖心などのドラマティックな感情を引き起こすことで、夢はわたしたちの注意を引こうとしているだけなのです。
②夢をみた本人だけが、夢が運んでくる正確な意味を理解することができます。正確な意味を理解する瞬間はほとんどの場合、「ああ、そういうことだったのか!」と自分の深い部分から納得できる「何かが腑に落ちた瞬間」または「ひらめき」のような感覚でやってきます。これはドリーム・ワークの醍醐味でもあり、夢の正確な意味を理解できたことを証明する基本的なサインです。
③夢がたったひとつだけの意味をもっているということは絶対にありません。すべての夢はさまざまなメッセージや、何層からも成る意味をもっています。
④あなたがすでに知っていることだけを、夢が見せてくることは絶対にありません。すべての夢は新しい意識の開拓を手伝ってくれます。新しい考え方や、視野を広めることを助けてくれます。
⑤誰かの夢の意味を探るときは、「もしこれがわたしの夢だったら…..」というフレーズを使って、それが自分の夢であるように話しながら、夢の意味やメッセージを探っていきましょう。夢はとても個人的で神聖な体験です。このフレーズを使うことでお互いを尊重し、柔らかいコミュニケーションを育むことができます。夢をみた本人にとって素直に受け取り辛いメッセージがあった場合でも、客観性をもって聞くことができます。
また、夢の意味を探る側も、周りの人への愛情や慈悲の気持ちを育むスキルを磨くことができます。そして、誰かの夢の中に自分へのメッセージを発見することができるサイコ・スピリチュアルな経験をすることができます。
⑥ドリームサークルに参加するメンバーは、ドリームサークル内でシェアされた個人的な情報について口外しないようにしましょう。夢の内容やメッセージはとても個人的で神聖なものです。グループメンバー全員が安心して参加できるように、「プライバシーを守る」ことはマナーです。お互いを尊重する高い意識をもって参加しましょう。
※このツールキットはMarine Institute for Projective Dream Workの創始者であり夢研究家として40年以上の実績を持つJeremy Taylor氏ウェブサイトから、事前に本人の許可を得て引用しています。Jeremy Taylor on dreams, myths, and social change
この、「もしこれが私の夢だったら・・・」というフレーズはとても強力です。誰かの見た夢に対して、ストレートに「それはこういう意味なんじゃないの?」と言ってしまうと、ジャッジしているエネルギーが漂い、角が立ってしまう可能性があるのですが、「もしこれが私の夢だったらこう言う意味があるかもしれない」と言う表現を使うことによって、相手との間に柔らかいスペースを作り出すことができます。夢は、その夢を見た本人の潜在意識にあるとても神聖でセンシティブな情報を含んでいるので、夢とその夢を見た本人をリスペクトする気持ちを持って扱うことが大切なのです。
また、「もしこれが私の夢だったら」言って話している人も、その言葉通り他人の夢を通して自分の内面の世界を散策することになります。「これが自分だったらどんなことに当てはまるのかな?」と思いを巡らせることで自分の人生について考えたり、現在起きていることの深い意味を探ったりすることができます。
ドリームサークルの面白いところは、その場でシェアされた誰かの夢は「誰かの夢」にとどまらず、「そこに参加した人全員の夢」となっていくところです。誰かが見た夢は、その場に参加した人全員が自分自身を見つめるための「きっかけ」なのです。
普段は何を考えているか分からないと感じている他人同士が、お互いの内面の世界をシェアし合う空間。夢をリスペクトし、お互いをリスペクトし合うことで、深い慈悲の気持ちと愛が育まれ、その場が暖かい雰囲気になっていきます。
私のドリームサークルの経験では、最初は正しい事、最もらしいことを言わなければ、という(日本人らしい?)プレッシャーを感じながら発言していてとても硬かったと思うのですが、時間をかけて次第に自分の言葉で話せるようになっていきました。お互いを暖かくリスペクトし合う空間に安心できたことに加えて、「もしこれが私の夢だったら・・・」と言う言葉を使うことによって、ゆっくりと自分の心を開いていくことができたのだと感じます。
正しいこと、最もらしいことを言いたい、言わなければならないと言う意識が弱まり、初めて自分の本当の言葉で話すことができた時、とても嬉しかったのを覚えています。自分の心とつながり、それを表現して、周りの人々に受け入れられたこと。エゴやサバイバルモード、そして「たてまえ」から解放されて、素直に自分を表現できるようになったことは、内面の成長への大きなステップでした。これは仮面をかぶっていることが当然のようになっている大人社会ではなかなか起きないことですが、 Jeremy先生は夢を通してマジックを起こし、大人が正直に心を見つめてオープンになれる時間、そして他人同士がお互いを思い合う機会を作っていらっしゃいました。
そして、語られるのはあくまで「夢」であり、誰かの人生の諸事情でないところがポイントです。夢という媒体を通して内面を散策していくところが、深刻になりすぎずとてもいいと思うのです。また、集まった人々のプロフェッションや得意分野、そして異なるものの見方が、夢の分析の仕方に彩りを与え、ストーリーがどんどん広がっていきます。
ドリームサークルの素晴らしさはこれだけにとどまらず、一つの夢にたくさんの意味があるように、ドリームサークルにも何層にもわたるたくさんの興味深い効能があります。その一例をあげると、たとえば夢はこれから人生で起きることのプレビューを見せてくれたり、警告をくれたり、そして心と体を癒したりもしてくれているので、注目することで実生活に実用的に役立てることができのです。
潜在意識はシンボルを通してメッセージを送ってきます。Jeremy先生も、他の数多くの著名な夢研究者たちのようにカール・ユング派の夢研究をベースにされてきましたが、集合意識体がシンボルに対して抱く共通のメッセージ以外にも、夢のシンボルには個人的な意味が多く含まれていると考えていらっしゃいました。自分の夢に何度も出てくる物や情景、そして印象的なシンボルとなるようなものについては特に注目して、自分にとってそれが何なのかを考えてみると、夢のストーリーの謎が解けることがあるかもしれません。
私も友人たちと定期的にドリームサークルを開催しているのですが、夢の世界の面白さには毎回驚くことばかりです。そして、人の意識の奥深さとミステリーは宇宙のように果てしないのだと感じます。
つらつらと書いてしまいましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
最後に、Jeremy先生がよく口にしていらした言葉で、しめたいと思います。
“The only energy is love. It’s just we can’t see it.”
あるのは愛のエネルギーだけだ。私たちはそれが見えていないだけ。
人の意識が宇宙のように広くて永遠なのだとしたら、それを理解できるのは最終的には愛のエネルギーだけ。そんな気がします。映画「インターステラー」でアン・ハサウェイ演じる女性が言っていた言葉を思い出し、ふと空を見上げたくなってしまう今日この頃です。