
ここ数ヶ月の間に、何人かのクライアントさんから「HSP(Highly Sensitive Person)」
について相談を受ける機会がありました。HSPとは、簡単にいうとエネルギーに敏感な人のことです。他人の感情のエネルギーや、場の雰囲気のエネルギーを敏感に感じて影響を受けやすいため、人と会うと異常に疲れたり、大勢の人がいる場所へ出向くとエネルギーを激しく消耗します。
日本人は伝統的に他人を配慮し互いに思いやる文化が根付いていることや、生活空間に置ける他人との距離感(パーソナルスペース)が比較的狭いため、欧米人などに比べるとHSP率が高い傾向があると言われています。そのため、ほとんどの人がある程度はHSPの特徴を持ち合わせていると言えますが、それでも影響力は個人によって差があります。
自分がHSPを自覚すべきかどうか見分ける手段としては、それが日々の生活の障害になっているかどうかという視点で判断するのが一つの方法です。たとえば、HSP度が高い人は他人のエネルギーをまるで自分のエネルギーのように感じてしまうため、接する人やその場の空間のエネルギーをまるで自分のものとして感じて激しい感情のアップダウンを感じます。ひどくなると偏頭痛などとして体の症状に現れることも稀ではありません。
自分以外のエネルギーに振り回されているのにそれに気づいていない状態だと、わけもなく気分の浮き沈みを感じます。たとえば大勢の人が集まる場、パーティーや飲み会などに出かけた日は興奮してなかなか寝付けなかくて翌日まで引きずったり(これをSocial hangoverと言ったりします)落ち込んでいる友人と話をした日は、感情移入しすぎて相手のことがなかなか頭から離れなかったりします。また、電車やバスなどの公共交通機関で気分が悪くなる傾向もあるかもしれません。安定しない自分の感情に不安になったり、自信が持てなかったり、複雑な自分自身の心を見つめることに抵抗感を感じることもあるでしょう。
HSPの症状が強い人は、エンパス能力(他人の感情を読み取る能力)が高い人が多いとも考えられています。そのせいで人間関係で苦労してしまうことも珍しくありません。他人に対して自分をオープンすることを怖がっていたりすることもあります。たとえば、打ち明け話ができるような信頼できる友人がなかなか作れないということもあるかと思います。または、グループの集まりの中でその場の空気を純粋に楽しむ、という、ほかの人にとっては普通のなんでもないことがとても難しかったりします。「他人との関係はとにかく疲れる。」そう思っているかもしれません。もちろん、恋人関係でも相手の影響を受けやすいでしょう。相手が激しい感情の持ち主であればそれに影響を受けて消耗することになるので、恋愛関係でも自然と慎重になります。また、他人がどう思っているかを気にし過ぎる、という特徴もあります。それはエンパス能力があるゆえに周りの感情を敏感に感じてしまうためです。
日本人なら誰でも多少はHSPまたはエンパスの傾向があるかとは思いますが、もしそれが子供の頃から続いていて、大人になった現在でも生活の障害になっていると感じているのであれば、自分がHSPまたはエンパスであると自覚して、それに基づいたライフスタイルを作っていくことが重要です。
他人のエネルギーにそれほど敏感ではない人たちと同じように生活していたら、心身ともに消耗してしまいます。タフに見える他人と自分を比較して、「自分はどうしてこうなんだろう?」と自分を責めたり、自信がなくなってしまうことにもなりますが、これは自分自身を理解して入れば全く必要のないことです。
人は本来、それぞれに違うようにできていているわけなので、大切なのは自分自身がその個性を理解して受け入れることです。そしてそれに基づいたライフスタイルを作って行くことで、弱点のように思えていた個性を、いずれは強みとして活かしてゆく事が出来るようになっていきます。
HSPまたはエンパスの人々にまずおすすめしたいことをいくつか挙げてみます。
○自分がエネルギーに敏感であることを自覚する。
「自覚」することがまず大きな第一歩。自分が周りの人よりもエネルギーに敏感だとわかっていれば、花粉症の人が花粉の時期に対策を取るようにして、普段の生活で必要な対策を練ることができます。
○自分のエネルギーモニターを調査する。
自分がどんな時に落ち着いているのか。どんな時に興奮するのか。どんな時に元気になり、そしてどんな時に落ち込むのか。感情にただ流されるように暮らすのではなく、自分の中にモニタリング機能を取り入れて、自分に何が起きているのかを調査します。
○生活空間を整える。
エネルギーに敏感な人は、自分の生活空間のエネルギーにも敏感です。外の世界で消耗してきたエネルギーを癒して調整できるような生活空間を作ることに意識を向けましょう。自分への投資と考えて、身も心も安らげる空間づくりをすることはとても大切です。そしてマメなお掃除や、自然と溜まってくる重たい気を頻繁に浄化する作業も必要です。
○プライベートで共に時間を過ごす相手や出向く場所を選ぶ。
これはHSPやエンパスの人にとって絶対的に必要なスキルです。プライベートなシーン以外ではなかなか選ぶ事ができない人間関係や行き先ですが、自分が選ぶ事ができる範囲ではできるだけ注意して選ぶ事が大切です。「義務感やなんとなく」でお付き合いしている人や場所は、繊細な自分自身を大切にすることは逆の結果になりかねません。生活を見直して、選択できる部分は大胆な決断をしましょう。
○チャージする時間を意識する
消耗したエネルギーをチャージする時間を意識して生活します。予定をいっぱいいっぱいに入れることはHSPまたはエンパスの人にとっては本人が意識している以上に消耗する行為です。忙しい日が続いたらチャージするための時間を作ることを意識して、本気でダウンしてしまう前に回復させます。計画的にチャージするための時間をスケジュールに組み込みましょう。
○他人と自分の感情の区別をつける
自分が落ちこんでいるのは、本当に自分のこと?それとも誰かや何かの影響を受けて起きていること?自分の感情が他人のものと別々であることに気づくために、メディテーションの習慣を持って、自分の心をセンタリングして落ち着かせる事がHSPやエンパスの人の辛い症状を著しく好転させます。メディテーションはHSPやエンパスの人にとっては即効性のある解毒剤のようなもの。絶対的に取り入れたい習慣です。
などなどが、初歩の対策案です。他にも、自分自身のエネルギーをシールド(保護)する方法を習得して、外からの影響を受けにくくする、などもあります。
繊細な自分の特徴を弱みとして生きていくよりも、理解して対策を練って行くことでポジティぐな可能性が広がって生きます。たとえば、HSPやエンパスの人は、他人の感情を自分の事のように経験してきた経歴から、複雑な人間の心を理解する能力に長けていたり、人間関係やその場の空気を読む高い洞察力を持っていたりなどのポジティブな特徴を持ち合わせています。これらは、社会で生きていく上で強みとして活かしていくべきものです。
まずは繊細な自分自身を受け入れること。そしてケアしてあげること。自分をいたわってあげること。そこから見えてくる事があると思います。

余談です:今日は久しぶりに本格的なチャイラッテを作りました。鍋で茶葉とスパイスをグツグツ煮て、アーモンドミルクを入れて。部屋中がチャイのスパイスでエキゾティックな香りでいっぱいになり、作業も気持ちよくはかどりました。