
自分軸で物事を選択できないという悩みに対するインナーワークをすることがありますが、どのクライアントさんにも共通しているのが「自分に自信が持てない」という思いです。
自分に自信が持てない人に共通している特徴的な思考パターンは他人と自分を比較して、自分に欠けているところを探してしまうこと。誰かの素晴らしいところを見つけて、憧れる気持ちはポジティブに捉えると自分を向上し続けるための素晴らしいモチベーションにもなります。でも、常に自分と他人を比較してしまう思考のクセを持っている場合、それが間違った方向に進むと「自分は永遠に不完全である」という考えに囚われてしまい、不健康で危険なマインドゲームをプレイし続けることになります。
自分に自信が持てないことについては、育った環境からこれまでに経験などさまざまなことが影響していて、たとえばその不安な気持ちのかたまりをもし形にできるとしたら、おそらく何層にも重なり合った、とても複雑な形状をしていると想像します。
この複雑な形をした感情と思考のエネルギーのかたまりを表面から整備して、よりわかりやすいものにする作業をしながら、同時に内側のコアな部分にアクセスして癒したり手当てする作業がインナーワークです。
まず、表面を整備する作業では思考にフォーカスをします。たとえば自分が持っている「自信がある人」のイメージを考え直してみることもいいかもしれません。自分が持っている自信がある人のイメージを例にして出したとき、どこかで「ナルシスト」や「謙虚さのたりない人」とのイメージが重なり合っていて、自分がそういう人になりたくないと思うがために、自信を持つことから無意識に自分を遠ざけている場合があります。
または、「こういう自分になれたら自信が持てる」というイメージがある場合、その「こういう自分」とはたとえばどんな人ですか?と質問すると、意外と曖昧な回答しか返ってこなかったりすることもあります。曖昧なものをなんとなく目指している自分。それはまるで常に形を変えてゆく雲を追いかけるかのようなイメージで、厄介な追いかけごっこのようになっていることもあります。
他には、たとえば自分が今現在属している環境が、自分とは全く違った種類の人たちで構成されている環境であるという場合もあります。自分と全く違っている人たちの中で、その人たちの価値観で暮らしている。その中でうまく環境に馴染んだ自分であろうと頑張りすぎて、本来の自分らしさからかけ離れた部分で生きていこうとするあまり、自信を持てない、または自分を見失ってしまったということもあります。
一方で、内側のコアな部分にフォーカスする作業は、前述の表から整備することがより思考に伴って整備していく作業であるのに対し、こちらはより「感情的なエネルギー」の作業になります。深い感情的な傷を癒したり、不必要な思いを手放したりなどの作業となりますので、自分自身と向き合うことが余儀なくされます。これに関しては、本人の準備ができていればすぐに開始できますが、人によって準備ができるまでにかなり遠回りせざるおえなかったり時間がかかる場合もあります。
ほとんどの人が「思考」のエネルギーと向き合うのは大丈夫だけれど、感情については時間がかかるように感じます。(もちろんときには逆の人もいます!)ケースバイケースですが、さまざまな角度から考えて自分を見つめて自分自身との関係を作り直す作業がインナーワークです。
長いようで短い人生。
人生の前半は、いろんな出来事や出会いからインスピレーションをもらってスポンジのように吸収しながら自分を形成していく貴重な時期ですが、人生の後半は自分の原点に戻って、自分にとって必要でないものを削ぎ落としながら、本来の自分らしさを極めていくための時間であるような気がします。自分らしさというのがどんなものであるにしろ、まずは本人がそれに気づいて大切にしてあげることから始めて、そして時間とともに磨いて価値を深めていくことで、より充実した人生の後半を生きることができるのだと感じます。
そもそも、「自信を持つ」というコンセプト自体がなんだかちょっとしっくりこないと感じる私は、自信を持つイコール「自分自身に快適であること」と言い換えて理解しています。それはなかなか簡単にできることではありませんが、でもきっと、時間をかけて目指す価値があるものなのだと思っています。
自分自身との関係は一生をかけて育てていくものなのだということを踏まえて、自分自身に快適である状態へと、できる限り近づいていくことが、自分軸で決断し、勇気を持って前に進み、そしてできる限り悔いの少ない人生を送るためのヒントなのではと感じています。
これについては私自身ももちろん修行中の身でありますが、迷ったときにはいつも軸を自分に戻すことに意識を向けて、そして反省はしても不完全な自分を責めないで、経験を得るごとに成長していける自分でありたいと思っています。
自分自身に快適であること。
座右の銘として、大切に温めています。
写真は、サンフランシスコの近く、Muir Woods National Park のレッドウッドツリーの森です。